コルチゾールは副腎皮質から分泌される糖質コルチコイドの一種で、ストレス応答の中核を担うホルモンである。急性ストレス時には血糖値を上昇させ、注意力や覚醒度を一時的に高める適応的な役割を果たす。しかし慢性的に高濃度が維持されると、海馬の神経新生を抑制し、前頭前皮質のシナプス可塑性を低下させることで、記憶力や実行機能に悪影響を及ぼす。

コルチゾールの分泌メカニズム

コルチゾールは視床下部-下垂体-副腎 (HPA) 軸を通じて分泌される。ストレスを感知した視床下部が副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH) を放出し、下垂体前葉から ACTH が分泌され、最終的に副腎皮質からコルチゾールが血中に放出される。分泌量は概日リズムに従い、起床直後に最も高く (コルチゾール覚醒反応)、夜間に最低値となる。

急性ストレスと認知パフォーマンス

短時間のコルチゾール上昇は、血糖値を上げ、注意や覚醒度を一時的に高める。一方で、制御できない急性ストレスでは、軽いものでも前頭前皮質が担う高次の認知機能が急速に低下しうるという報告がある。

慢性ストレスによる認知機能への長期的影響

繰り返しのストレスは、海馬の CA3 領域の樹状突起の萎縮や、歯状回の神経新生の抑制を引き起こす。この 2 つの変化には、糖質コルチコイドのほか、興奮性アミノ酸と NMDA 受容体も関わる。長期のストレスでは、前頭前皮質の樹状突起にも構造の変化が生じる。