流動性知能とは、蓄積された知識や経験に依存せず、初見の問題からその場で規則性を見つけ出し、論理的に処理する能力を指す。図形の並びから次に来るものを推理する課題や、見たことのない構造を整理する課題で中心的に働く。結晶性知能と対をなす概念であり、成人期の比較的早い時期にピークを迎え、その後は緩やかに低下するとされる点も、生涯にわたって伸びうる結晶性知能との違いである。
働いている場面
系列推理を解く過程では、いくつかの作業が繰り返される。図形の属性を分解してどれが変化しているかを見つけ、変化の仕方を仮説として立て、次の要素で検証する。仮説が外れれば別の属性に注意を移す。この間、立てた仮説を保持し続ける必要があるため、ワーキングメモリの容量が成績に関わる。複数の規則が同時に動く問題が難しいのは、保持すべき仮説の数が増えて容量を圧迫するためと説明される。図形推理の成績がワーキングメモリの課題の成績と相関する背景には、この共通の土台があると考えられている。
測定と文化の影響
流動性知能の測定では、言葉を使う問題は母語や教育歴の差が成績の差に表れるため、形 / 個数 / 向き / 塗りといった視覚的属性の変化を扱う図形課題が用いられてきた。完全に文化から自由な課題は存在しないが、語彙問題に比べれば背景の影響は小さい。非言語的な推理の指標として広く使われてきたレーヴン漸進的マトリックスも、この種の図形課題である。
訓練による変化の解釈
同じ形式の課題を繰り返せば得点は上がる。属性を分解する手順が身につき、頻出する規則を覚えることによるものとみられる。主な脳トレーニング企業のサイトが引用する査読付きの介入研究を検討したレビューでは、訓練した課題の成績が上がる証拠は多かったが、離れた課題への波及の証拠はわずかだった。