平均寿命の世界格差 - 30 年の開き
WHO の 2024 年統計によると、世界で最も平均寿命が長い国は日本 (84.3 歳) と スイス (83.4 歳) であり、最も短い国はチャド (52.5 歳) とレソト (50.7 歳) である。 同じ地球上に生まれながら、生まれた場所によって期待される寿命に 30 年以上の差がある。 この事実は、世界の不平等を最も端的に示す指標の一つである。
平均寿命の国際格差は 20 世紀後半に一度縮小したが、2000 年代以降は 再び拡大傾向にある。HIV/AIDS の流行がサブサハラアフリカの寿命を押し下げ、 先進国では医療技術の進歩が寿命を押し上げ続けているためだ。
平均寿命を決める 5 つの要因
疫学研究の蓄積から、平均寿命を規定する主要因は以下の 5 つに集約される。 公衆衛生インフラ (安全な水、衛生設備)、栄養状態、医療アクセス、 社会経済的地位、そして行動要因 (喫煙、飲酒、運動) である。
これらの要因は独立ではなく、相互に強く関連している。 貧困は栄養不良と医療アクセスの欠如を同時にもたらし、 教育水準の低さは健康リスク行動の増加と結びつく。 平均寿命の格差は、単一の原因ではなく、複合的な社会構造の帰結である。
健康寿命という別の視点
平均寿命とは別に、「健康寿命」(HALE: Health-Adjusted Life Expectancy) という 指標がある。これは日常生活に制限のない期間の長さを示す。 日本の平均寿命は 84.3 歳だが、健康寿命は 74.1 歳であり、 約 10 年間は何らかの健康上の制限を抱えて生きることになる。
興味深いことに、平均寿命と健康寿命の差 (不健康期間) は 先進国のほうが長い傾向がある。医療技術が疾病を「治す」のではなく 「管理する」方向に進化した結果、慢性疾患を抱えながら長く生きる人が増えたためだ。 単に長く生きることと、健康に長く生きることは別の問題である。
個人の寿命予測は可能か
平均寿命は集団レベルの統計であり、個人の寿命を予測するものではない。 同じ国に住む同年齢の人でも、遺伝的素因、生活習慣、社会的ネットワーク、 経済状況によって実際の寿命は大きく異なる。
MyRank で表示される寿命関連のランキングは、「あなたの国の平均的な人が どの程度生きるか」を世界と比較するものであり、個人の余命を予測するものではない。 しかし、自分が属する集団の統計的な位置を知ることは、 健康投資の動機づけとして有効に機能しうる。
寿命格差の縮小に向けて
国連の持続可能な開発目標 (SDGs) のゴール 3 は「すべての人に健康と福祉を」である。 具体的には、2030 年までに新生児死亡率を出生 1,000 人あたり 12 以下に、 5 歳未満児死亡率を 25 以下に削減することを目標としている。
これらの目標が達成されれば、平均寿命の国際格差は大幅に縮小する。 なぜなら、途上国の平均寿命を押し下げている最大の要因は乳幼児死亡率の高さだからだ。 成人の寿命格差よりも、生まれてから 5 歳まで生き延びられるかどうかの格差のほうが、 国際比較においてはるかに大きい。