世界の運動習慣 - WHO の警告
WHO の 2022 年報告書は、世界の成人の 27.5% が推奨される身体活動量を 満たしていないと警告している。推奨量は「中強度の有酸素運動を週 150 分以上、 または高強度の有酸素運動を週 75 分以上」である。 この基準を満たさない人の割合は、高所得国 (36.8%) のほうが 低所得国 (16.2%) より高い。
この逆説的な結果は、低所得国では日常生活自体が身体活動を伴う (徒歩通勤、肉体労働、家事の手作業) ためである。 経済発展に伴うデスクワーク化、自動車依存、家電の普及が 意図的な運動の必要性を生み出している。
運動量と死亡リスクの用量反応関係
Arem et al. (2015) の 66 万人を対象としたメタ分析は、 運動量と死亡リスクの関係が非線形であることを示した。 推奨量の 1〜2 倍 (週 150〜300 分) で死亡リスクは 31% 低下し、 3〜5 倍 (週 450〜750 分) でも追加的な効果は小さいが有害ではない。
重要なのは「何もしない」から「少しする」への変化が最も大きな効果を持つ点である。 週 15 分の軽い運動でも、完全な非活動と比較して死亡リスクは 14% 低下する。 完璧を目指して挫折するより、小さな習慣を継続するほうが健康上の利益は大きい。
運動の種類と効果の違い
有酸素運動 (ランニング、水泳、サイクリング) は心血管系の健康に、 レジスタンストレーニング (筋トレ) は筋骨格系の維持に、 柔軟性運動 (ストレッチ、ヨガ) は関節可動域の保持にそれぞれ効果がある。 WHO は有酸素運動に加え、週 2 日以上の筋力トレーニングを推奨している。
MyRank の運動ランキングでは、運動頻度 (週あたりの回数) を指標としている。 強度や種類は考慮していないため、週 3 回のウォーキングと週 3 回のマラソン練習は 同じスコアとなる。この単純化は限界であるが、 世界規模で比較可能なデータが頻度に限られるための妥協である。
座位時間という新たなリスク因子
近年の研究は、運動習慣とは独立に、長時間の座位行動自体が 健康リスクであることを示している。Ekelund et al. (2016) のメタ分析は、 1 日 8 時間以上座っている人は、4 時間未満の人と比較して 死亡リスクが 1.2〜1.6 倍高いことを報告した。
ただし、1 日 60〜75 分の中強度運動を行えば、 長時間座位による死亡リスクの上昇はほぼ相殺される。 問題は「座りっぱなしで運動もしない」組み合わせであり、 現代のオフィスワーカーの多くがこのカテゴリに該当する。
運動習慣の世界ランキングが示すもの
自分の運動頻度が世界のどの位置にあるかを知ることは、 行動変容のきっかけになりうる。週 3 回以上運動している人は、 世界の成人の上位 30% に位置する。週 5 回以上なら上位 10% である。
しかし、ランキングの上位にいることが目的ではない。 自分の身体と生活に合った持続可能な運動習慣を見つけることが本質である。 データは現状を客観視するためのツールであり、 他者との競争のためのものではない。