1 人あたり CO2 排出量の世界分布
Global Carbon Project の 2023 年データによると、世界の 1 人あたり年間 CO2 排出量の 平均は 4.7 トンである。しかし国別の差は極端だ。 カタール (35.6 トン)、バーレーン (25.7 トン) が突出して高く、 コンゴ民主共和国 (0.04 トン) やチャド (0.06 トン) は 1 トンにも満たない。 最大と最小の差は 800 倍以上に達する。
日本は 8.5 トンで世界平均の約 1.8 倍、OECD 平均 (8.9 トン) とほぼ同水準である。 パリ協定の 2050 年目標 (実質ゼロ) を達成するには、 先進国は現在の排出量を 90% 以上削減する必要がある。 個人レベルでの排出量の把握は、この巨大な課題の出発点となる。
排出量の構成 - 何が CO2 を生むのか
個人の CO2 排出量は大きく 4 つのカテゴリに分かれる。 住居 (冷暖房・電力) が約 30%、交通 (自動車・航空) が約 25%、 食事 (特に畜産物) が約 20%、消費財・サービスが約 25% を占める。 ただしこの比率は国やライフスタイルによって大きく異なる。
航空機の利用は排出量に劇的な影響を与える。 東京-ニューヨーク往復 1 回で約 3.4 トンの CO2 が排出される。 これは日本人の年間平均排出量の 40% に相当する。 年に数回国際線に乗る人は、それだけで世界平均を大幅に超える排出者となる。
排出量の不平等 - 富裕層と貧困層
Oxfam の 2023 年報告書は、世界の上位 1% の富裕層が 下位 66% (50 億人) と同量の CO2 を排出していることを示した。 排出量の不平等は国家間だけでなく、国内の所得階層間でも顕著である。
この事実は気候正義の議論の核心にある。 気候変動の影響を最も受けるのは排出量の少ない途上国の貧困層であり、 最も排出している富裕層は影響を回避する資源を持っている。 個人の排出量ランキングは、この構造的不平等を可視化する一つの手段である。
個人の行動変容の効果と限界
個人レベルで最も効果的な排出削減行動は、研究によって明らかになっている。 Wynes & Nicholas (2017) は、自動車を手放す (-2.4 トン/年)、 大西洋横断フライトを 1 回減らす (-1.6 トン)、 植物ベースの食事に移行する (-0.8 トン) を上位に挙げた。
しかし、個人の行動変容だけでは気候変動は解決しない。 エネルギーシステム、交通インフラ、産業構造の転換には政策的介入が不可欠である。 個人の排出量を知ることは重要だが、それを「個人の責任」に矮小化することは、 システムレベルの変革から目を逸らすことにもなりうる。 両方のレベルでの行動が必要である。
MyRank での CO2 ランキングの位置づけ
MyRank の CO2 排出量ランキングは、入力されたライフスタイル情報から 年間排出量を推計し、世界の分布と照合してパーセンタイルを算出する。 このランキングでは「上位」(排出量が多い) であることは望ましくない。 むしろ下位に位置することが、地球環境への負荷が小さいことを意味する。
通常のランキングとは価値判断が逆転するこの指標は、 「ランキング上位 = 良い」という無意識の前提を問い直す機会でもある。 何を測定し、何を「良い」とするかは、社会の価値観の反映である。